ウォッチケース KUDEN(ワインダー)

ウォッチケース KUDEN(ワインダー)



絵画のような蒔絵、宮殿(くうでん)升組みの額縁が魅力

壁掛けやスタンド置きタイプの絵画風ワインダーケースです。
普段は、ワインダーケースとは思わないインテリアの扉をスライドするとワインダーケースが現れます。
このケースにはワインダーが10個収納可能です。価値ある腕時計にとって安心の保管場所となります。
本製品最大の特徴は、周囲を覆う宮殿升組み。緻密に組み上げられた升組みすべてに溜め塗りという技法で漆が施されています。表のスライドする扉には、螺鈿(青貝)を用いる螺鈿技法と切金(金の薄い延べ板)を用いる平(ひょう)文(もん)技法を用い、日本の伝統的な意匠が華やかさを演出します。
蒔絵は、お好みの絵柄に変更可能です。
※ワインダーケース KUDENは、信頼あるワインダーで名高いスイスキュービック(SWISS Kubik)を装着する専用装飾ケースです。

Titleウォッチケース KUDEN(ワインダー)
Date2016.01
題目Watch Winder Case/時計ケース
技法木工、宮殿升組み、漆蝋色仕上げ、溜め塗り(升組み)、乾漆塗り(内部)、金蒔絵、螺鈿細工、切金細工、消し金めっき
素材ヒバ、合板、漆、金粉、螺鈿、切金、プレス金具、スライド金具
サイズW902 H663 D140 mm
発注者自社開発
デザイナー株式会社グリンバレー
撮影Keisuke Ono
Watchi Winder Case KUDEN のサイトを見る

統合した伝統工芸の素材と技法

木地は、厚みのあるヒバと合板を使用し、頑丈なフレームと扉を製造しています。
宮殿の技術と意匠によって、額縁を表現しました。
宮殿とは、仏壇の内部に据える屋根部分の細かな木工造作物を呼びます。浄土にあるの楼閣を模したものとされる神社仏閣建築の姿を模したもので、重要なものを安置するため、最終的には彫刻や金物などあらゆる技術を用いて完成します。細部にこそ魂が宿る-日本美の真髄がこの宮殿にあります。
塗りに関しては、さまざまな技法を駆使しています。まず、額縁にあたる升組みは溜め塗り、内部ワインダーケース回りは乾漆塗り、そして扉表面は、朱と黒の蝋色仕上げとなっています。
溜め塗りとは、下地の上に中塗りとして色漆(今回は黄色)を塗り、その上に透き漆を塗ったもので、下色を浮だたせる技法です。
乾漆塗りとは、中塗りの時に漆を粉末状にした乾漆粉を蒔き、その上から上塗りする技法で、表面は石目仕上げとなります。鏡面でないので、キズが付いてもわかりにくい仕上がりとなります。また、研ぎ具合や色乾漆粉などの使用で、いろいろな表情を作り出すことができます。
蝋色仕上げは、塗った漆を平坦に研ぎ、生漆を何度も摺リ込んで鏡面に仕上げ、磨くことで艶を出す、漆塗り最高級の技法とされています。朱色の蝋色仕上げは、黒に比べて色むらが出やすいので難しいとされています。
蒔絵とは、漆で仕上げた面の上に、漆で絵や線を描き金・銀などの金属粉を蒔く技法であり、雅で華やかな雰囲気を醸し出します。
蒔絵に用いた螺鈿は、カットした青貝を用いて絵柄を作り上げる技法です。青貝が光り輝くことで、絵柄が生まれる装飾技法です。
また、蒔絵に用いた平文(ひょうもん)は、切金(金の薄い延べ板)を用いて絵柄を作り上げる技法です。金が光り輝くことで、絵柄が生まれます。純金ならではの輝きがあります。切金とは、地金(インゴット)を0.03ミリに延ばした、金箔よりも300倍厚みのある純金です。
扉の四隅には、消し金めっき加工したプレス金具で豪華さをさらに演出しています。

  1. 木工

    木地は、製品の土台・フレームなどを作る最初の工程です。
    INOUEの木工の基本は、城下町彦根で江戸時代から続く伝統の金仏壇製造で培われた工芸品質です。
    彦根仏壇の木地は、日本建築と同じく釘を使わないホゾ組みを得意としています。材料を吟味し部材の切り出しから継手や面取りに至るまで、妥協のない品質で職人がひとつひとつ手作りする木地は、何世代にも受け継がれる仏壇を支えています。
    INOUEの製造ネットワークは量産が得意な他産地の木工所との繋がりもありますので、プロジェクトに適した木工で対応いたします。

  2. 宮殿

    仏壇の内部に据える屋根部分の細かな木工造作物を宮殿(くうでん)と呼びます。仏像などを安置するため、浄土にある楼閣や神社仏閣建築を模して作ります。宗派によって形もさまざまで、唐破風などの屋根や瓦、升組などの部材を正確に組みあげる高度な技術が必要です。彦根では専門の職人、宮殿師が手掛けます。
    宮殿は最終的に彫刻や金物、塗りなどあらゆる技術を用いて仕上げます。細部にこそ魂が宿る-宮殿には日本美の真髄があると考えています。
    INOUEでは、升組みを他の商品に転用するなど、宮殿にのみ伝わる木工細工の技法なども提案もしています。アイデア次第で建物のミニチュアや木製ブロックなど、様々な可能性が広がりる分野です。

  3. 漆塗り

    漆は非常に高品質で美しい塗装です。ウルシノキの樹液を採取し、ゴミや埃を濾した精製漆が塗装に用いられます。その成分に含まれるウルシオールが空気中の水分と結合し硬化する世界最強の保護塗料のひとつです。
    しかし漆は扱いが難しく、伝統技法で平滑に仕上げるには下地工程から高度な職人技が求められます。下地から上塗りまで何回も塗って研ぐ工程を繰り返して、塗り重ねます。中でも蝋色(ろいろ)仕上げは、漆の塗装面を平坦に研ぎ、生漆を摺リ込みながら何度も磨きあげ、鏡面で奥深い艶を出す漆塗り最高級の技法とされています。
    漆とひとくちに言っても下地の処理から仕上げの方法までさまざまな技法が発展しています。INOUEは仏壇製造で培った漆工への深い知見から、変わり塗り・色漆から最高級の蝋色まで、適した漆塗りの技法とその職人を提案しています。

  4. 蒔絵

    漆で絵や文様を描き、金粉などを蒔きつける漆芸技法を蒔絵(まきえ)と呼びます。広義では螺鈿や切金などを含んだ加飾を概ね蒔絵と呼ぶこともあり、金粉のみで表現したものを特に金蒔絵と呼んで区別することもあります。 蒔絵は日本で生まれ、独自に発展した日本のみに存在する伝統漆工芸技法です。平蒔絵や高蒔絵、さらに平蒔絵を一旦漆で埋め直し砥石や研炭などで蒔絵後の塗面を研ぎ出す研出蒔絵(とぎだしまきえ)など様々な技法が生まれました。さらに蒔き終えた金粉や銀粉の上に透き漆や色漆で塗り固め、研ぎ出して表現したり、金粉や銀粉等の号数による細かさなどの種類によって奥行きを表現したり、多彩な加工手法を駆使する事により表現の幅が時代と共に発展してきました。 また、安価な加工手法として、金粉を蒔いたままの「消し蒔絵」やシルクスクリーン印刷を応用した「スクリーン蒔絵」もあります。 INOUEでは様々な技法を持つ蒔絵職人のネットワークがあり、ご要望に適した技法を手配しております。

  5. 切金細工

    切金細工は、厚さ0.03ミリ(金箔の厚さの300倍)の切金を小刀・ポンチなどでカットし、蒔絵のアクセントとして漆で貼り付ける加飾技法です。金箔の300倍の厚みがある切金は、立体感があり蒔絵をさらにゴージャスに引き立ててくれます。
    同音異義語として、截金細工があります。これは、金箔を4~5枚焼き合わせた金箔を、仏像などに載せて文様を描く装飾技法です。焼き合わせた金箔を竹刀(ちくとう)・小刀・ポンチなどでカットし、腐糊(ふのり)と膠(にかわ)を混ぜた糊で対象物に筆を使って貼っていきます。七宝文様や麻の葉文様、毘沙門亀甲文様、網代文様などの細かな文様を描き出します。詰め過ぎず空き過ぎずの線と空間のバランスが、美しさを高めます。仏像の曲面を描くことで進化してきた截金は、曲面以外の平面にも加飾することが可能です。金箔の4~5倍の厚みがある截金は、立体感を引き立ててくれます。

  6. 螺鈿(らでん)細工

    主に青貝から削り出した真珠層の板を切り出し、漆で貼り付けて加飾する技法を螺鈿細工と呼びます。蒔絵と同時に施すことが多く、貼り付けた青貝の板の上からさらに金蒔絵を施したり、毛彫したりして、華やかに演出します。蒔絵のポイントとして使うことが多い技法です。
    青貝の代わりに、変わったところではウズラやニワトリの卵の殻を使った卵殻細工などもありますが、ほぼ同じ技法です。最近では青貝の代わりに人工の京都オパールを使う技法も確立されています。

    螺鈿は蒔絵師が習得している技法のひとつです。仏壇蒔絵でもよく使う技法でもあり、INOUEでも様々な表現や技法に合わせて、職人と相談しながら効果的に螺鈿を取り入れて加飾します。

  7. 錺金具

    工芸に使われる金物のうち、装飾性に富む金工品を錺金具(かざりかなぐ)と呼びます。使われる場所や目的に合わせて、銅や真鍮などの金属を使い、立体的な形に彫る地彫(ぢぼり)や、細かな線を彫り込む毛彫(けぼり)、地金に穴を開けて奥行き感を出す透し彫りなど様々な技法があります。
    最近では、コストを抑えるためにプレス・電気鋳造(電鋳)・エッチング金具などの金具も多く使用されています。
    データをいただければ、家紋や社章などを彫ることも可能です。
    錺金具の仕上げも、金めっきで金を施す方法から漆を挿したり、くすべ・ふすべ、黒く光るニッケルめっきなど、様々な技法があり、これらを組み合わせて加飾します。木工品との相性も良く、様々な工芸品でポイントを演出します。
    INOUEでは、最適な技法・装飾方法を選択してご提案いたします。

  8. 金めっき(鍍金)

    めっきは、金属や非金属(プラスチック等)の表面に他の金属を被覆(ひふく)する表面処理の一種です。
    仏壇・仏具では、主に真鍮材や銅材の表面に金や銀等でめっきします。分子レベルで密着させるので、金箔押しより表面は強く、金属にはめっきの方が優れています。
    なお、めっきに限らず、金属の表面加工には多種多様な技法が発展しています。INOUEでは、ご希望に添った加工方法をご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。