ウォッチケース HAFU(ワインダー)

ウォッチケース HAFU(ワインダー)






組子技術を用いた本体と風格ある台座

インテリアとして腕時計を飾って楽しむことができるワインダーケースです。
台座がステージとなり、一段と上質さを演出します。Type1もType3も、写真のように角を立てた置き方と面を下にした置き方が選べます。
日本の「組子」技術をフレームワークとして取り入れたのが「破風(HAFU)」です。組子は釘を用いずに木を組み上げる木工技術で、その精緻さと美しさは圧巻です。そして、ワインダーを大きく三角に配置し、日本の城や神社仏閣の屋根に用いられる伝統的な意匠の破風と霊峰富士に思いを馳せています。
フレームワークに組子技術を用いたことで、繊細なイメージを保ちながらも強度を手に入れました。全面に黒を塗り上げ、正面に錺金具を取り付けることで、素材のコントラストと力強さも同時に演出しています。
また、日本の伝統文化として、大切なものは台座の上に置く習わしがあります。台座というステージに置くことで、一段と風格あるものとなっています。台座も手を抜くことはせずに、Type3では黒漆蝋色仕上げの上に京都オパールを使用した蒔絵でゴージャス感を表現しています。Type1は、カシューでの乾漆塗りとなっています。※ワインダーケース HAFUは、信頼あるワインダーで名高いスイスキュービック(SWISS Kubik)を装着する専用装飾ケースです。

Titleウォッチケース HAFU(ワインダー)
Date2015.10
題目Watch Winder Case/時計ケース
技法木工、天然漆塗り蝋色仕上げ、金蒔絵、 京都オパール彩輝光螺鈿、プレス金具、消し金めっき
素材ヒバ、合板、漆、カシュー、金粉、京都オパール、プレス金具
サイズType3: W660 H462 D354 mm
Type1: W278 H298 D181 mm
発注者自社開発
デザイナー株式会社グリンバレー
撮影Keisuke Ono
Watchi Winder Case HAFU のサイトを見る

統合した伝統工芸の素材と技法

木地は、仏壇でも使用する組子技術を用いています。
塗りは、本体はカシュー塗り・朱漆塗り、Type3の台座は黒蝋色、Type1の台座はカシュー乾漆塗りとなっています。
蝋色仕上げは、塗った漆を平坦に研ぎ、生漆を何度も摺リ込んで鏡面に仕上げ、磨くことで艶を出す、漆塗り最高級の技法とされています。
乾漆塗りとは、中塗りの時に漆を粉末状にした乾漆粉を蒔き、その上から上塗りする技法で、表面は石目仕上げとなります。鏡面でないので、キズが付いてもわかりにくい仕上がりとなります。また、研ぎ具合や色乾漆粉などの使用で、いろいろな表情を作り出すことができます。今回は、カシュー塗料で同じことを行っています。

蒔絵は、漆で仕上げた面の上に、漆で絵や線を描き金・銀などの金属粉を蒔く技法であり、雅で華やかな雰囲気を醸し出します。
Type3の台座の蒔絵は、「彩輝光」という漆工芸の新技術を用いました。細かな京都オパールを漆で付着させ、塗り重ねた漆を研ぎ出して表現しています。オパールなので、見る角度によって色が変わります。京都オパールとは、京セラが開発した人工オパールです。

  1. 木工

    木地は、製品の土台・フレームなどを作る最初の工程です。
    INOUEの木工の基本は、城下町彦根で江戸時代から続く伝統の金仏壇製造で培われた工芸品質です。
    彦根仏壇の木地は、日本建築と同じく釘を使わないホゾ組みを得意としています。材料を吟味し部材の切り出しから継手や面取りに至るまで、妥協のない品質で職人がひとつひとつ手作りする木地は、何世代にも受け継がれる仏壇を支えています。
    INOUEの製造ネットワークは量産が得意な他産地の木工所との繋がりもありますので、プロジェクトに適した木工で対応いたします。

  2. 漆塗り

    漆は非常に高品質で美しい塗装です。ウルシノキの樹液を採取し、ゴミや埃を濾した精製漆が塗装に用いられます。その成分に含まれるウルシオールが空気中の水分と結合し硬化する世界最強の保護塗料のひとつです。
    しかし漆は扱いが難しく、伝統技法で平滑に仕上げるには下地工程から高度な職人技が求められます。下地から上塗りまで何回も塗って研ぐ工程を繰り返して、塗り重ねます。中でも蝋色(ろいろ)仕上げは、漆の塗装面を平坦に研ぎ、生漆を摺リ込みながら何度も磨きあげ、鏡面で奥深い艶を出す漆塗り最高級の技法とされています。
    漆とひとくちに言っても下地の処理から仕上げの方法までさまざまな技法が発展しています。INOUEは仏壇製造で培った漆工への深い知見から、変わり塗り・色漆から最高級の蝋色まで、適した漆塗りの技法とその職人を提案しています。

  3. 蒔絵

    漆で絵や文様を描き、金粉などを蒔きつける漆芸技法を蒔絵(まきえ)と呼びます。広義では螺鈿や切金などを含んだ加飾を概ね蒔絵と呼ぶこともあり、金粉のみで表現したものを特に金蒔絵と呼んで区別することもあります。 蒔絵は日本で生まれ、独自に発展した日本のみに存在する伝統漆工芸技法です。平蒔絵や高蒔絵、さらに平蒔絵を一旦漆で埋め直し砥石や研炭などで蒔絵後の塗面を研ぎ出す研出蒔絵(とぎだしまきえ)など様々な技法が生まれました。さらに蒔き終えた金粉や銀粉の上に透き漆や色漆で塗り固め、研ぎ出して表現したり、金粉や銀粉等の号数による細かさなどの種類によって奥行きを表現したり、多彩な加工手法を駆使する事により表現の幅が時代と共に発展してきました。 また、安価な加工手法として、金粉を蒔いたままの「消し蒔絵」やシルクスクリーン印刷を応用した「スクリーン蒔絵」もあります。 INOUEでは様々な技法を持つ蒔絵職人のネットワークがあり、ご要望に適した技法を手配しております。

  4. 錺金具

    工芸に使われる金物のうち、装飾性に富む金工品を錺金具(かざりかなぐ)と呼びます。使われる場所や目的に合わせて、銅や真鍮などの金属を使い、立体的な形に彫る地彫(ぢぼり)や、細かな線を彫り込む毛彫(けぼり)、地金に穴を開けて奥行き感を出す透し彫りなど様々な技法があります。
    最近では、コストを抑えるためにプレス・電気鋳造(電鋳)・エッチング金具などの金具も多く使用されています。
    データをいただければ、家紋や社章などを彫ることも可能です。
    錺金具の仕上げも、金めっきで金を施す方法から漆を挿したり、くすべ・ふすべ、黒く光るニッケルめっきなど、様々な技法があり、これらを組み合わせて加飾します。木工品との相性も良く、様々な工芸品でポイントを演出します。
    INOUEでは、最適な技法・装飾方法を選択してご提案いたします。

  5. 塗装(カシュー・ウレタンなど)

    INOUEでは、伝統工芸の高度な天然漆本堅地をはじめ、同じ漆科のカシュー(和名:勾玉の木)から採れる天然樹脂のカシュー塗料や、合成樹脂のウレタン塗料まで、あらゆる種類の塗装方法を可能としています。
    サイズもコーヒーカップなどの小さなものから建材に使用する大きなものまで幅広く塗装可能です。
    仏壇工芸の要とも言える塗装の品質は、常に厳しい目をもって吟味しています。
    INOUEは、技術力を持った職人のネットワークを有し、あらゆる塗装のご要望にお応えします。

  6. 組子

    組子は、釘を用いずに木を組み上げる木工技術で、その精緻さと美しさは圧巻です。元来、建具や衝立(ついたて)などに用いられてきました。最近では、和モダンな空間を演出するものとしてホテル・店舗などで利用され、斬新なパターンのものも多く出てきています。
    INOUEでは、グッドデザイン賞を受賞した若手職人などとつながりを持ち、絶えずお客様のニーズにお応えできる体制を整えています。統合工芸として、組子を塗装したり、金箔を押したりすることも可能です。

  7. 金めっき(鍍金)

    めっきは、金属や非金属(プラスチック等)の表面に他の金属を被覆(ひふく)する表面処理の一種です。
    仏壇・仏具では、主に真鍮材や銅材の表面に金や銀等でめっきします。分子レベルで密着させるので、金箔押しより表面は強く、金属にはめっきの方が優れています。
    なお、めっきに限らず、金属の表面加工には多種多様な技法が発展しています。INOUEでは、ご希望に添った加工方法をご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。