構想から2年半の年月をかけ、ついに完成しました。
リビングの一角に鎮座し、自分の宝物を収納するこの世に1つの逸品です。
木目出し塗リが美しいキャビネット型ワインダーケースです。彦根仏壇の伝統技術の粋を詰め込まれています。蒔絵で扉裏に日本の美しい春秋の景色が表現されているのをはじめ、随所に木工、漆工、金工、すべてに職人の手仕事が施されています。
このケースにはワインダーが16個収納可能です。価値ある腕時計にとって安心の保管場所となります。他にも、ジュエリー・外箱などが収納できる引出しが付いています。
この大型タイプは、お客様のご希望の寸法や仕様をいちから設計してお作りします。
※ワインダーケース DANは、信頼あるワインダーで名高いスイスキュービック(SWISS Kubik)を装着する専用装飾ケースです。
Title | ウォッチケース DAN(ワインダー) |
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Date | 2016.11 |
題目 | Watch Winder Case/時計ケース |
技法 | 木工、宮殿、彫刻、木目出し蝋色仕上げ、乾漆塗り、カシュー塗装、研ぎ出し蒔絵、螺鈿細工、金箔押し、錺金具(手彫り・エッチング金具)、消し金めっき |
素材 | ヒバ・合板(木地・宮殿)、紅松(彫刻)漆・カシュー(塗装)、金丸粉・プラチナ丸粉・青貝(蒔絵等)、金箔・金粉(金箔押し)、真鍮・銅・金(錺金具) |
サイズ | W675 H1800 D400 mm |
発注者 | 自社開発 |
デザイナー | 株式会社グリンバレー |
撮影 | Keisuke Ono |
木地は、彦根仏壇の特徴であるホゾ組みを用い、ウォッチワインダー専用の寸法でいちから製造しています。
彫刻は、霊鳥である鳳凰や古代文様の宝相華を形どっています。鳳凰は、とてもシャープで今にも動きそうな躍動感があります。
宮殿(くうでん)は、彦根仏壇の宮殿技術を使ってワインダーケース用に作りました。まさに大切なものを保管する屋形です。
塗りは、本体外側の彦根仏壇の特徴である木目出し蝋色(ろいろ)塗りがポイントです。これは、赤みのある透き漆の奥に木目が見える高級感あふれる技法です。
蝋色仕上げは、塗った漆を平坦に研ぎ、生漆を何度も摺リ込んで鏡面に仕上げ、磨くことで艶を出す、漆塗り最高級の技法とされています。
乾漆塗りは、中塗りの時に漆を粉末状にした乾漆粉を蒔き、その上から上塗りする技法で、表面は石目仕上げとなります。鏡面でないので、キズが付いてもわかりにくい仕上がりとなります。また、研ぎ具合や色乾漆粉などの使用で、いろいろな表情を作り出すことができます。
蒔絵は、研ぎ出し磨き蒔絵で本金粉・プラチナ鈖・螺鈿を贅沢に使用し、春の桜と秋の紅葉をオリジナルで図案化しています。
蒔絵とは、漆で仕上げた面の上に、漆で絵や線を描き金・銀などの金属粉を蒔く技法であり、雅で華やかな雰囲気を醸し出します。
螺鈿とは、主に青貝から削り出した真珠層の板を切り出し、漆で貼り付けて加飾する技法です。
金箔押しは、障子と宮殿等の内部に施し豪華さを演出しています。剥げないように表面コーティングもしています。
錺金具(かざりかなぐ)は、主に障子と扉に用い、扉金具はオリジナルデザインの「崩し七宝柄」をエッチングで表現しています。銅板・真鍮板で作り、最後に表面に消し金めっきを施しています。
木地は、製品の土台・フレームなどを作る最初の工程です。
INOUEの木工の基本は、城下町彦根で江戸時代から続く伝統の金仏壇製造で培われた工芸品質です。
彦根仏壇の木地は、日本建築と同じく釘を使わないホゾ組みを得意としています。材料を吟味し部材の切り出しから継手や面取りに至るまで、妥協のない品質で職人がひとつひとつ手作りする木地は、何世代にも受け継がれる仏壇を支えています。
INOUEの製造ネットワークは量産が得意な他産地の木工所との繋がりもありますので、プロジェクトに適した木工で対応いたします。
仏壇の内部に据える屋根部分の細かな木工造作物を宮殿(くうでん)と呼びます。仏像などを安置するため、浄土にある楼閣や神社仏閣建築を模して作ります。宗派によって形もさまざまで、唐破風などの屋根や瓦、升組などの部材を正確に組みあげる高度な技術が必要です。彦根では専門の職人、宮殿師が手掛けます。
宮殿は最終的に彫刻や金物、塗りなどあらゆる技術を用いて仕上げます。細部にこそ魂が宿る-宮殿には日本美の真髄があると考えています。
INOUEでは、升組みを他の商品に転用するなど、宮殿にのみ伝わる木工細工の技法なども提案もしています。アイデア次第で建物のミニチュアや木製ブロックなど、様々な可能性が広がりる分野です。
漆は非常に高品質で美しい塗装です。ウルシノキの樹液を採取し、ゴミや埃を濾した精製漆が塗装に用いられます。その成分に含まれるウルシオールが空気中の水分と結合し硬化する世界最強の保護塗料のひとつです。
しかし漆は扱いが難しく、伝統技法で平滑に仕上げるには下地工程から高度な職人技が求められます。下地から上塗りまで何回も塗って研ぐ工程を繰り返して、塗り重ねます。中でも蝋色(ろいろ)仕上げは、漆の塗装面を平坦に研ぎ、生漆を摺リ込みながら何度も磨きあげ、鏡面で奥深い艶を出す漆塗り最高級の技法とされています。
漆とひとくちに言っても下地の処理から仕上げの方法までさまざまな技法が発展しています。INOUEは仏壇製造で培った漆工への深い知見から、変わり塗り・色漆から最高級の蝋色まで、適した漆塗りの技法とその職人を提案しています。
漆で絵や文様を描き、金粉などを蒔きつける漆芸技法を蒔絵(まきえ)と呼びます。広義では螺鈿や切金などを含んだ加飾を概ね蒔絵と呼ぶこともあり、金粉のみで表現したものを特に金蒔絵と呼んで区別することもあります。 蒔絵は日本で生まれ、独自に発展した日本のみに存在する伝統漆工芸技法です。平蒔絵や高蒔絵、さらに平蒔絵を一旦漆で埋め直し砥石や研炭などで蒔絵後の塗面を研ぎ出す研出蒔絵(とぎだしまきえ)など様々な技法が生まれました。さらに蒔き終えた金粉や銀粉の上に透き漆や色漆で塗り固め、研ぎ出して表現したり、金粉や銀粉等の号数による細かさなどの種類によって奥行きを表現したり、多彩な加工手法を駆使する事により表現の幅が時代と共に発展してきました。 また、安価な加工手法として、金粉を蒔いたままの「消し蒔絵」やシルクスクリーン印刷を応用した「スクリーン蒔絵」もあります。 INOUEでは様々な技法を持つ蒔絵職人のネットワークがあり、ご要望に適した技法を手配しております。
主に青貝から削り出した真珠層の板を切り出し、漆で貼り付けて加飾する技法を螺鈿細工と呼びます。蒔絵と同時に施すことが多く、貼り付けた青貝の板の上からさらに金蒔絵を施したり、毛彫したりして、華やかに演出します。蒔絵のポイントとして使うことが多い技法です。
青貝の代わりに、変わったところではウズラやニワトリの卵の殻を使った卵殻細工などもありますが、ほぼ同じ技法です。最近では青貝の代わりに人工の京都オパールを使う技法も確立されています。
螺鈿は蒔絵師が習得している技法のひとつです。仏壇蒔絵でもよく使う技法でもあり、INOUEでも様々な表現や技法に合わせて、職人と相談しながら効果的に螺鈿を取り入れて加飾します。
箔押しとは、金箔や銀箔、白金箔で物品を覆う装飾技法です。彦根では箔押しと言いますが、他の地域では箔貼り・箔置きとも呼ぶそうです。
金箔は、金の延びる性質を利用して厚さ約0.0001ミリメートル(1ミクロン)まで均一に延ばしたもので、ここまで薄く均一に延ばせる技術は日本だけにしかありません。鼻息で飛んでいく薄さです。
ひとくちに金箔といっても、純度が高いものから銀を合金して色味を調整したものまで、さまざまな種類があります。また、箔の押し方にも箔の光沢を出す技法や上品に優しい光沢を出す技法などがあります。
INOUEでは、高い技術が必要な広い大きな板の箔押しから、彫刻などの曲面全面の箔押しまで、熟練した職人による幅の広い箔押し技法に対応しています。また、今までは難しいとされてき現代素材であるアクリル樹脂やガラスへの箔押しにもお応えしています。
工芸に使われる金物のうち、装飾性に富む金工品を錺金具(かざりかなぐ)と呼びます。使われる場所や目的に合わせて、銅や真鍮などの金属を使い、立体的な形に彫る地彫(ぢぼり)や、細かな線を彫り込む毛彫(けぼり)、地金に穴を開けて奥行き感を出す透し彫りなど様々な技法があります。
最近では、コストを抑えるためにプレス・電気鋳造(電鋳)・エッチング金具などの金具も多く使用されています。
データをいただければ、家紋や社章などを彫ることも可能です。
錺金具の仕上げも、金めっきで金を施す方法から漆を挿したり、くすべ・ふすべ、黒く光るニッケルめっきなど、様々な技法があり、これらを組み合わせて加飾します。木工品との相性も良く、様々な工芸品でポイントを演出します。
INOUEでは、最適な技法・装飾方法を選択してご提案いたします。
木や石などに彫刻刀などを使って彫り、立体的な形を生み出す技法です。日本が木の文化であるため、伝統工芸では主に木工彫刻が発展しいます。素材はケヤキ、桧、杉、松、柘植、白檀などなど用途や目的によってさまざまな素材が使われます。
INOUEでは、花鳥などの動植物の仏壇欄間から仏像など、それぞれ専門の木工彫刻師が得意とする形があり、多様なご要望にお応えします。図柄は吉祥柄(きっしょうがら=縁起の良い)などの伝統図柄をベースにしたオリジナル図柄も、ご希望の応じてご提案いたします。
透き漆(すきうるし)という半透明の漆を使い、ケヤキ等の杢目を残して塗り上げる技法です。彦根仏壇の特徴とも呼べる高度な漆塗りです。
木目を出すために従来の下地をせず、目摺りという生漆を木目に吸い込ませる作業を行って吸い込みを止め、木目を赤色に着色します。そして透き漆を均一に塗って乾燥させてから研ぐという工程を数回繰り返します。最後に蝋色仕上げで艶出し鏡面にして仕上げます。美しいケヤキの杢目が、透き漆を通して上品に現れる、奥行きのある漆表現です。
蝋色仕上げは、塗った漆を平坦に研ぎ、生漆を何度も摺リ込んで鏡面に仕上げ、磨くことで艶を出す、漆塗り最高級の技法です。
組子は、釘を用いずに木を組み上げる木工技術で、その精緻さと美しさは圧巻です。元来、建具や衝立(ついたて)などに用いられてきました。最近では、和モダンな空間を演出するものとしてホテル・店舗などで利用され、斬新なパターンのものも多く出てきています。
INOUEでは、グッドデザイン賞を受賞した若手職人などとつながりを持ち、絶えずお客様のニーズにお応えできる体制を整えています。統合工芸として、組子を塗装したり、金箔を押したりすることも可能です。
めっきは、金属や非金属(プラスチック等)の表面に他の金属を被覆(ひふく)する表面処理の一種です。
仏壇・仏具では、主に真鍮材や銅材の表面に金や銀等でめっきします。分子レベルで密着させるので、金箔押しより表面は強く、金属にはめっきの方が優れています。
なお、めっきに限らず、金属の表面加工には多種多様な技法が発展しています。INOUEでは、ご希望に添った加工方法をご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。
ガラスは伝統工芸の世界では比較的新しい素材です。
漆などを塗ることは、密着度の問題があり難しかったのですが、最近塗ることができる漆も開発されました。ガラス越しに裏側を見ることができる面白さもあります。
ガラスにもさまざまな種類があり、仕入れも比較的容易ですが、割れる素材のため工芸品に取り入れる場合はその扱いには配慮が必要です。割れにくくするために抑える方法と小口には格段の配慮が必要です。また、高級品では万が一割れてしまっても修理できるように制作することを提案しています。